勘違い

小さな頃、近くの市場に、よく置いてあった笹漬け。

祖母と私の大好物だったもの。

小さな樽だけど、一二枚づつ大切に食べるので、数日は楽しめた。


おつかいについて行って、買ってもらえないのをわかってる日。

それでも、確かめる。

今日は置いてないなあ。

あっ、今日は、たくさん置いてある。

今度は、いつ買ってもらえるんだろう。


樽の蓋を開けると、木とお魚とお酢の混じったいい匂い。

あつあつごはんと、ちょろんとお醤油をつけた笹漬けを食べる。


大好物であることは、今もかわりなく。

百貨店で同じものを見つけた時は、嬉しかった。

嬉しくて、すぐに買って帰って食べた。


同じ味だと思った。


母にそのことを話したのを覚えていて、お土産に買って寄ってくれたことがあった。

別々に暮らしていた時のこと。


同じものであるはずなのに、自分で買った時より美味しかった。

母に買ってもらうと、美味しい。


小さな樽が、鞄から出される。

他の食材も出されてゆく。

全部出しおわったら、順に冷蔵庫にしまわれる。


ただ当たり前のこと、誰もがすること。

珍しくもなんともない、そんな動作。

じっと見てると、ふいに切なくなる。

たまらなくなって、視線を外す。


一緒に暮らすようになっても、同じ。

昔のように、母が買って来てくれると、美味しい。

そして、鞄から出す姿を見るのが、同じように切ない。


笹漬けの入っている冷蔵庫。

扉をあけて、取り出す。



20141221140136ff1.jpg

甘鯛昆布締め。

・・・・・・

20141221140136229.jpg

違う。

樽は似てるけど、小鯛の笹漬けとは、違う。

ええ~、ちごたかあ~。

似てるさかい間違おて買うて来たんやなあ、まあ食べてみて。

20141221140136be5.jpg

あああ~、楽しみにしてたのになあ、なんて思いながら食べた。

食べたら、美味しかった。

祖母にも食べさせてあげたかったなあ。

きっと、嬉しそうに、少し首を傾げて、美味しい美味しいって言ったはず。


母は、おかずにならへんわ~、の人。

自分の好物でないもの、祖母と私のために買って来てくれてたんだな。。。